佐渡汽船ジェットフォイルドック見学

今年の3月にあったジェットフォイルのドック見学という、レアなツアーに参加させていただきました。
車で言うところの車検のようなもので、年に一回定期点検をする際にせっかくならこのレアな所を見てもらおうという佐渡汽船の企画。現在佐渡には「ぎんが」「つばさ」「すいせい」と三隻のジェットフォイルがあり、中でも「ぎんが」はボーイング社で作られたもの。あとの二隻は川崎重工で作られました。

今回のドックは「すいせい」を見学するわけですが、ドックは信濃川河口にあり信濃川水面よりも下で作業をしています。案内するのは普段メンテナンスをしている工場の方たち。見学者は一応ヘルメットを着用して見学します。

ジェットフォイルは250人乗りと思いの外大きな船で、プロペラではなくウォータージェットで推進します。海水をポンプで汲み上げてジェット噴射しているわけですが、1分間に150トンもの水を汲み上げます。消防車の最大放水量に換算すると、およそ63台分だそうです。この強い推進力で水中翼を利用して海水面より浮いて翼走航海し、時速80km以上という高速走行出来るのです。
もともとは軍事目的のミサイル艇だったようですが、これを日本で初めて旅客運送用に導入したのが佐渡汽船だということを知っている人は少ないかも知れません。

ドック工場内に入るとまず目に入るのは、海に浮かんでいないジェットフォイル。
滅多に見ることが出来ない光景です。壁の色が変わっているところは、信濃川の川の水面で普段は仕切られて水を抜いているのですが、ドック終了時には水を入れて浮かせてからドックから出すのだそうです。なので、壁面を触ると汚れるので注意が必要と言われました。さて、下に降りてみましょう。

下から見たジェットフォイルです。ピカピカに磨かれた特殊なステンレス製の水中翼ですが、貝や藻などが付着していると燃費も悪くなるので綺麗に磨くのだそうです。
そしてこの水中翼ですがなんとこの水中翼だけで7億円もするのだとか。この水中翼は強い衝撃を受けると乗客を守る為外れるようになっていて、過去にクジラなどの大型生物に衝突した際に2回程落としているのだそうです。流石に7億円ですから海底から引き上げたこともあるのだとか。この水中翼にはまだ秘密があり、水中翼のところにスピーカーが付いていてイルカやクジラが嫌がる音を出して極力衝突を避ける工夫がしてあるそうです。

この網のようなものはジェットフォイルの推進に重要な吸水口で、チタン製のグリル(およそ3000万円の特注品)が付いていて、ここから海水を吸い上げジェット噴射によって推進します。導入当初はこのグリルも無かったそうで、海の漂着物が詰まって動かなくなったり度々あったそうですが、佐渡汽船の度重なる改造によりグリルを付けたり、吸水口が詰まっても逆噴射をしてゴミを取り除く装置を付けたり、安全走行出来る仕組みを整えてきたのだそうです。

ここは船の後ろにあるジェットエンジン格納スペースです。ガスタービンエンジンが左右に二つ搭載されています。この時は取り出してメンテナンスしている所でした。

船には様々なセンサーが付いていて、ここには加速度センサー、船の真ん中にはジャイロセンサー、高度センサーなどから情報をACSコンピューターで感知し、船酔いしないように高さを一定に保ち揺れを防いでいるのです。

普段工場などに入ることがないので、これが当たり前の光景なのかどうかわかりませんが、道具もきちっと整理整頓されております。こんなに様々な工具が必要なんですね。

この日はドック見学の人数も多かったので、二手に分かれて見学。ジェットフォイルのドック見学を始めたのは最近ですので、まだ知らない方も多いようです。滅多に見れない操縦席も見学。普段は4人の船員さんがここにいるわけですが、操縦桿はまさに飛行機そのものです。さすがはボーイング社のデザインといったところでしょうか。

こちらはガスタービンエンジン。予備に2機ありドック入りした際に予備と入れ替えてローテーションしながら使っているそうです。

特殊なネジや部品などは、このドック内の工場で作成することもあり、盤旋などの特殊な機械も設置してあります。

このプロペラは岸壁に付ける際など翼走航海から着水(水中翼を上げた状態)した際に使われます。

急旋回や緊急停止などの安全性の説明には本当に関心します。普段何気なくジェットフォイルに乗っていましたが、説明されると本当に素晴らしい乗り物だなぁと思えます。緊急停止の比較で、時速80kmの車と時速80kmのジェットフォイルでは車は停止距離が80mに対して、ジェットフォイルは90m、カーフェリーなどの船だと時速35kmに対して520mの停止距離なのだそうです。

ここが信濃川とドックを隔てている壁の上です。

上から見るとこんな感じ。右側が信濃川、左側がドックです。かなりマニアックな光景ばかりですが、この川との隔たりのところがサンダーバードを彷彿とさせる基地感がありワクワクしませんか?
出来ればドック終了の際に水を入れるところも見てみたい気がします。

こんな感じでドック見学が出来ます。ドック見学ではまだまだ細かな説明や解説もありますので、ぜひドック見学の機会がありましたら佐渡汽船まで申し込んでみてはいかがでしょうか。