佐渡島に生息するウミホタルという光る生き物

佐渡のウミホタル

ウミホタルとは

ウミホタルは海中にいるプランクトンの仲間で、顎脚綱(がくきゃくこう)、貝虫亜綱(かいちゅうあもく)、ミオドコパ上目、ミオドコピダ目、ウミホタル科ウミホタル属に属する甲殻類です。学名はVargula hilgendorfiiで、英語ではSea-fireflyといいます。
よく混同される海の光る生物として、夜光虫というのがいますが、虫と名前につきますが、鞭毛藻類のプランクトンで500μm(0.5mm)と顕微鏡がないと見ることが出来ません。学名はNoctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)で、ラテン語では「夜の海中で光る発光体」や「海の中で輝く月」といった意味があるのだとか。

佐渡の漁師さんに聞いても、ウミホタルと夜光虫の区別はわからず、あまりよく知られていないのが実情です。
それもそのはずで、昼間は海の底の砂の中に潜ってにいて、夜になると活動を始める夜行性の生物なのです。体長は成虫は2〜3mm程度の大きさで、左右二枚の殻が背側中心部の蝶番構造の殻に覆われた介形類という海の昆虫と言われるほど種数の多いグループに属します。その種数は世界で報告されているだけで、13000種類以上いるのだそうです。幼体から成体になるまで5回ほど脱皮を繰り返して大きくなるのですが、1回の脱皮で1.3倍ほどになります。
ウミホタルのように発光する生物は日本国内では、ウミホタル、トガリウミホタル(Cypridina noctiluca)の他に4種未掲載種が生息しているそうです。

ウミホタルの生態

写真が拡大撮影したウミホタルですが、左上の大きなサイズがメスで、中に卵を有しています。黒く目立つ点が目で複眼になっています。この複眼は18個の個眼で構成されていて、昆虫に比べると少ないのですが、その分個眼が大きく、弱い光でも効率的に感知する事ができます。個眼のサイズ、形状は460nm付近の波長に最適化されているそうです。
黄色い色をしているところが発光物質のルシフェリンです。上唇部分には多くの分泌細胞が存在していて、発光に用いられるルシフェリン、ルシフェラーゼのほか、粘液物質などを生産、分泌する事ができます。前方にはスリットがあり、そこから付属肢を出し泳ぐ際に使用したり、摂食の際に餌を把握するために使用します。またオスは触覚のところに吸盤がついていて、メスを捕まえるために用いられるそうです。
日中は砂の中に潜って休んでいて、日没とともに活動を始めます。月齢により活動が左右されるようで、満月近くになるとあまり餌を食べなくなり、新月近くになると活動が活発になるようです。また、海水温によっても活動が変わり、春から秋にかけて活発に活動し、岸辺にも生息しますが、冬になると深いところへと移動するようです。
寿命は成体になって半年ぐらい生きるそうで、越冬したオスは春先交尾したあと大抵はすぐ死にます。メスは貯蔵した精子で何度か産卵を繰り返すようです。

ウミホタルの光

ウミホタルの発光の仕組み

ウミホタルが何故光るのかは、詳しく解明されていないのですが、求愛で使われる、餌の場所を仲間に知らせる、外敵から逃げる際に使われるなど、様々な用途で発光しているのだと思われます。よく観察していると、餌を捕食している時に誤って仲間にかじられびっくりして光っているのも見かけます。
ウミホタルの光る物質は、上唇内の分泌腺で生成される顆粒に含まれています。そこから基質ウミホタルルシフェリンと酵素ウミホタルルシフェラーゼが射出され、海中の酸素と結びつくと波長460nmの青色光として発光します。陸のホタルもルシフェリンとルシフェラーゼを使用し酸素と反応させ発光するのですが、発光する際にATP(アデノシン三リン酸)も必要です。ウミホタルの発光は基質と酵素と酸素のみで反応します。
このウミホタルを捕食し光る魚がいて、キンメモドキやツマグロイシモチなどがそうで、消化器官で発光物質を分離し自らの発光器官で反応させて発光させます。
また、ウミホタルルシフェラーゼの糖鎖に近赤外線有機蛍光色素を導入して得られた蛍光色素を、がん細胞を見つけるマーカとして使用するという研究が進められています。

ウミホタルとネオワイズ彗星

ウミホタルのいるところ

基本的に砂地の浅海に生息していて、淡水が混ざらないところ、流れが早くない入り江になっているようなところで、水質のよい餌が豊富なところに多く生息します。海面近くまで浮遊することはなく、海底で遊泳しているベントス生物です。
日本では太平洋側では南房総や篠島、淡路島、粟島、小豆島、沖縄など温かい海で見ることが出来ます。日本海側では能登島と佐渡島で見ることが出来ます。おそらく佐渡島がウミホタルが多く見られる北限かと思われます。佐渡島でも西側の二級河川の国府川の流れる、砂浜の広がる真野湾で多く見られ、特に数が多く見られるのが豊田漁港付近です。反対側の佐渡島東側の住吉海外でも若干見られますが、それほど数は多くありません。
海外では、カリブ海、オーストラリアやモルディブ、東南アジアなどで近縁な発光性ミオドコーパ類が多く見られます。

ウミホタルのマクロ動画(4K)

佐渡島ウミホタル観察会

この不思議で神秘的な光る海の生き物ウミホタルをぜひ見たい!というご要望にお応えし、佐渡観光交流機構と一緒にウミホタル鑑賞会を6月から10月の新月間際の土曜日に開催しています。場所は豊田の真野漁港多目的広場で、6月は夏至に近いことから20:00頃だとまだ明るいので、開始時刻を20:30として、7月〜10月は20:00からとしています。天候や人数によって観察所要時間は前後しますが、1時間程で終了いたします。

観察会の参加費といたしまして、お一人様2000円(お子様1000円)をいただいてます。駐車場が広いので、100人ぐらいは集めても良いのですが、感染対策もあり、30名様を上限とさせていただきました。注意すべき点としては、暗い海のそばですので、小さなお子様の手はしっかり握っていただき、観察をしていただきたいと思っております。また、蚊やブヨなどがいるかもしれませんので、虫よけスプレーなどもご用意いただくと良いと思います。集合場所から観察会の場所までの移動も足元が暗いので、懐中電灯をご用意ください。
ウミホタルの観察に際して、スマートフォンで撮影する方が多くいらっしゃいますが、フラッシュを炊いての撮影はご遠慮ください。また、ウミホタルが光っている最中にライトを点けたりすると、光が見えなくなってしまうので、観察中のライト点灯もご遠慮ください。
観察会が終わった後、ウミホタルはすべて海に帰すので、お持ち帰りすることは出来ません。夏休みの宿題などでどうしても、もっとよく観察したい場合のみ、ガイドに相談してみてください。
佐渡島のウミホタル観察会のお申し込みは佐渡エンジョイプランへ。

また、ウミホタル観察会の取材申し込み、ウミホタル観察会を含むツアー造成などのご相談は下記までお願いいたします。

ご縁の宿伊藤屋
〒952−0318 新潟県佐渡市真野新町278
TEL:0259−55−2019 (6代目番頭 伊藤善行 宛)
お問い合わせメールフォーム https://itouyaryokan.com/contact/