2022.2.18 NEW !

佐渡観光のオーバーツーリズムの弊害について考える

乙和池浮島

世界の持続可能な観光地100選になった佐渡市。また、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」として世界文化遺産の国内推薦することが決定しました。これらはニュース性のある観光にとってはプラス材料です。一方、世界文化遺産登録については反対意見もあり、その一因となっているのがオーバーキャパについてです。これらは宿泊施設や飲食店などのサービス低下により、佐渡の評判を落としてしまうという懸念が大半です。
インターネットで「佐渡 オーバーツーリズム」などで検索すると日本政策投資銀行が「佐渡市の金山」世界文化遺産登録を契機とした地域価値の向上に関する調査報告書と題してまとめてあるのがヒットします。こちらを読むと、受け入れ側のオーバーキャパについて触れられていますが、もう一つ屋久島や白川郷などの環境破壊についても触れられています。

日本一のトビシマカンゾウの群生地 大野亀

訪れる観光客が増えれば、一定数マナーの悪いお客様も来客することは否めません。わかりやすい事例で言うと、日本一のトビシマカンゾウの群生地である大野亀。5月〜6月ぐらいにかけてトビシマカンゾウの大群生を一目見ようと、観光バスも複数台、レンタカーや自家用車が通常用意してある駐車場に収まらず、臨時駐車場を草刈りをして整備し、交通誘導しないと来客に対応出来ない程です。

そして、コロナ禍だからなのか、昨年などはマスクの落とし物がいたるところに散見しました。ごみ問題もさることながら、良い構図で写真を撮りたいがため、花を踏み荒らしてトビシマカンゾウの群生の中に入って撮ろうとするカメラマンがいることです。これは直接的な環境破壊と言えます。これらは目に見える弊害ですが、実は目に見えない弊害もあります。

高層湿原性浮島

こちらは大佐渡スカイラインからほど近い、乙和池という天然の池です。高層湿原性浮島があり、その大きさに至っては日本一と言われる県指定の天然記念物の場所。静寂な新緑が鏡のようになった池の水面に映り込み、絶景スポットとして人気です。こちらは観光バスが立ち寄ることが難しい、乗用車がすれ違うのがやっとな細い道の奥にあり、駐車場も乗用車が7〜8台ほど停まればいっぱいになる場所です。

光るキノコ 月夜茸

9月頃にはこの池に生えるツキヨタケというキノコが見れます。このキノコは枯れたブナやミズナラに寄生するのですが、完全に朽ちてしまうと発生しません。近年このキノコの数が増えたのは、ブナやミズナラが枯れたということであり、その枯れた原因のひとつがこの池に訪れる人が増えたことに起因するのではないかと、地元の樹木医の方からお話を聞きました。

樹木医の方いわく、乙和池の周りの遊歩道になっているところに、むき出しになった木の根っこがいたるところにあり、それを人が踏み傷つけることで、悪い菌が入り込み樹木が弱っていき、やがて倒木するほど枯れてしまうこともあるのだとか。(他にも様々な要因がある)

乙和池の倒木

こうしたオーバーユースの対策として、ウッドチップを遊歩道に敷いて、樹木の根のダメージを軽減するという取り組みをしました。これも非常に難しく、ウッドチップを厚くしすぎると、そこに悪い菌が繁殖し樹木や周辺の環境に悪影響を与えることもあるそうで、経過観察しながら慎重に環境を見守らなければならないそうです。

こうしたオーバーツーリズムの目に見えない環境負荷は、ダメージが目に見える段階になると取り返しがつきません。だから閉鎖する、やめるなど閉ざしてしまうのではなく、共存していく道をどうやったら構築出来るかを考えねばなりません。例えば、乙和池の自然を守るために神社にお賽銭兼募金箱のような感じで設置して、訪れた方に寄付を募り、その集まった金額で集落の方の整備資金、樹木医の方への謝礼金などに当てるなどやり方はあるはずです。

乙和池神社

こうした自然の絶景スポットは訪れる人が増えても、地元にお金が落ちる仕組みに繋げるのは難しく、大野亀に関しては大野亀ロッジにその時期になるとお客様が殺到し、そこにお金が落ちるぐらいで、駐車場整備をしたり、トビシマカンゾウ以外のススキや蔓性植物などの草刈り駆除など掛かる費用に対して直接的な売上に直結する仕組みはありません。もちろん、訪問の需要があれば交通機関、宿泊施設、飲食や土産屋なども間接的な売上に繋がるのだとは思います。

佐渡島も含め自然景観をウリにしているところは、きっと同じ悩みを抱えていると思います。
何か良い解決策はないか、いつも考えてはいるのですが、答えは見つからず。
今後も私に出来うることをこの発信ということを含め、していきたいと思います。

最後にこのブログを最後までご覧になった方へお願いを一つ。
樹の周辺を歩く際には、なるべく木の根っこを踏まないように気をつけて歩きましょう。でも決して怪我はしないように。

佐渡番茶を使った佐渡島のご当地プリン「佐渡番茶プリン」

佐渡番茶プリン

当館のお菓子工房にて作っている「佐渡番茶プリン」は、佐渡産のお茶と、佐渡乳業の牛乳がいっぱい入ったトロトロのぷるんぷるんな、番茶のコクと風味が香る佐渡のご当地プリンです。レストラン&バーこさどにて販売しております。店内でお召し上がりいただけますし、お持ち帰りもOKです。

佐渡番茶プリン

佐渡乳業の牛乳はパッケージの可愛さだけでなく、味も風味もよく牛乳好きにも評価が高いです。こちらをたっぷりと入れたプリンなので、トロトロでぷるんぷるんな食感になります。番茶は味と香りとコクを最大限引き出すために、粉茶になった佐渡産番茶を使用します。

ご当地プリン佐渡番茶プリン

焼き上がった佐渡番茶プリンは冷まして、黒蜜ソースをかけてお召し上がりいただきます。量的にも多すぎず少なすぎず、80g程充填しています。市販のプッチンプリンが67gですから、それより少し多めとなっています。

佐渡番茶

原料の佐渡産のお茶の葉ですが、両津地区の潟端・横山・吉井地区で主に栽培されています。こちらは神蔵恵治さんの茶畑で、新芽が出るのが6月頃と8月頃で、二回お茶の葉を収穫することが出来ます。この葉っぱを番茶にするわけですが、番茶というと普段飲みする低級品なお茶を指していて、夏以降に採った三番茶、四番茶を用いたり、製造工程ではじかれた大きな葉っぱを用いられたりします。

神蔵恵治

佐渡産の番茶は一番茶も二番茶も柔らかい若芽も贅沢に焙じているため、苦味や雑味が少なくスッキリとしたお茶の甘みとコクが味わえます。お茶の生産地としては村上と同様北限地帯であり、普通は静岡や京都や佐賀など温かい地方での栽培が多いようです。

お茶の刈り取り

お茶の刈り取りはアーチ状になったバリカンのような機械で行います。大きな袋の中にどんどん入っていき、収穫した葉っぱはすぐJAお茶加工場へと運びこまれます。こちらで破砕、蒸し、乾燥などを行い製品となるお茶へと加工します。

JAお茶加工場

神蔵さんと一緒に加工場の中に入らせていただき、見学させていただきました。お茶の香りがブワッとしつつ、夏の暑さをさらに工場の蒸し暑さが上乗せされたような場所でお茶が作られます。

佐渡産お茶の加工
佐渡お茶職人
佐渡お茶職人

お茶の葉っぱの揉み加減や、番茶の焙じる加減など最終的には職人さんの目利きで商品へと仕上がっていきます。佐渡番茶の商品が仕上がると、柿の葉茶などの加工もしていたり、他のお茶製品もこちらで加工しているようです。

・さどまるしぇ 佐渡番茶
https://sado-sanchoku.net/index.php?dispatch=products.view&product_id=108

・さどのめぐみっ茶
https://megumittya.com/

・矢田農園 柿の葉茶
https://sadoyata.theshop.jp/items/2004250

・沼垂ビール 佐渡番茶エール
https://nuttaribeer.stores.jp/items/6030a188aaf043223a326f77

たらい舟(はんぎり)職人金子啓次さんのたらい舟制作現場

たらい舟作り

佐渡島はたらい舟保有台数が世界一!昭和60年代にはおよそ200艘あったと言われております。(小木たらい舟製作技術保存会調べ)今では使われなくなってしまったたらい舟も含め、およそ100艘まで減ってしまったようです。(新潟県調べ)
そんなたらい舟ですが、実は制作する方も亡くなり詳しい資料とかも残されていなかったと、ダグラスブルックスさんの「佐渡のたらい舟」という書籍に記されておりました。こちらの書籍には事細かく、設計図や道具、たらい舟の歴史や現在の使われ方などが書いてあり、大変参考になります。
ですが、、、やはり実際にたらい舟を作っているのを見てみたい!

そんなことで、実際たらい舟を作っている金子啓次さん(宿根木のはんぎり)のところにお邪魔してお話を伺いました。ちなみにはんぎりとは、樽を半分に切ったような底の浅い桶のこと。

竹釘

たらい舟は海で漁具として使われるもので、磯ネギ漁で漁師さんが舟として今でも使っているものです。小木地区の海岸は海底溶岩が隆起して出来た地形で、ゴツゴツして入り組んだ岩場となっており、海藻や貝類など生息しやすい磯となっています。細長いボート状の舟ですと、小回りが効かないので、たらい舟の方が適しているのだそうです。
海で使うものなので、鉄製の釘ではすぐ錆びてしまいますので、この竹釘が使われます。

はんぎりの作り方
たらい舟の作り方

たらい舟は全部で約40枚の横板を並べて、竹釘でつなげていきます。緻密な大工仕事と桶職人ならではの木材の吸水と膨張率など素材の特性を熟知した熟練の技で組み上げていきます。金子さんはたらい舟(はんぎり)の作り手でもあり、漕ぎ手でもある故に、使い勝手も熟知しているので、桶職人や大工さんには無い知恵と知識があり、まさにたらい舟職人さんとしての熟練の技があるお方です。

たらい舟の作り方
たらい舟の作り方
宿根木はんぎり

見ている間に次々と横板が継がれていき、木槌の音が工場に鳴り響きます。木で出来ているので、水を含めば膨張しますし、乾燥すると収縮します。陸に上げておくと当然乾燥するので、そういった手入れも必要になるのだとか。最近ではFRP(繊維強化プラスチック)などでコーティングしたたらい舟がありますが、木が呼吸しづらくなるので、腐りやすくなるのだとか。

たらい舟修復

この棕櫚(シュロ)の繊維は、水漏れする隙間に詰め込み浸水を防ぐ役目があるそうです。昔は乾ききった和船の船底から浸水したら、この棕櫚を詰めて防水していたことから、たらい舟にも使われたのだとか。

たらい舟作りの道具
たらい舟制作の道具

大工道具でも、やはり普通の大工さんが使わないような道具もいくつかあるようです。特にノコギリの形状や刃渡り、鉋の種類など、特殊なものが多いような気がします。

たらい舟の箍
竹の箍を編む

こちらはたらい舟の箍(たが)です。竹で箍を編んでいくのですが、このように長い長い竹を丁寧に割いて編んでいきます。これを嵌めればいよいよ完成に近づいていきます。
このように木と竹だけで舟が作られているんですね。この竹は切る時期も重要だそうです。これをたらいの円周に合わせて編み上げるのも、とても技術のいる作業だそうです。(本人は簡単だよと言いますが、、、)

たらい舟制作 たらい舟制作

最後の板が嵌り、ぐるっと一周横板が繋がりました。あとは箍をハメればいよいよ「たらい舟」らしくなってきます。最後の板ってどうやって叩くんだろう?と思っていたら、板と板の段差のところを叩いて嵌めるんですね。あとは箍を嵌める時にギュッと締めるので、きっちり隙間がなくなるそうです。

たらい舟ミニチュア

作業場の棚にはミニチュアのたらい舟が置いてありました。なんとも可愛らしい感じですが、作る工程は一緒なので、手間はかかるでしょうね。ちなみに、たらい舟一艘いくらぐらいですかとお聞きしたところ、30万で出来るとのこと。一艘欲しい!という方、またディスプレイで使いたい!という方はぜひ金子さんにコンタクト取ってください。

金子啓次さん Facebookアカウント

金子さんは冬はスキーのインストラクターもやっていて、年中お忙しい方なのに、合間でたらい舟も制作しているって本当に凄い。今度は時間を作って、金子さんのご指導の元たらい舟を漕ぐ修行をしたいと思っております。