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佐渡観光のオーバーツーリズムの弊害について考える

乙和池浮島

世界の持続可能な観光地100選になった佐渡市。また、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」として世界文化遺産の国内推薦することが決定しました。これらはニュース性のある観光にとってはプラス材料です。一方、世界文化遺産登録については反対意見もあり、その一因となっているのがオーバーキャパについてです。これらは宿泊施設や飲食店などのサービス低下により、佐渡の評判を落としてしまうという懸念が大半です。
インターネットで「佐渡 オーバーツーリズム」などで検索すると日本政策投資銀行が「佐渡市の金山」世界文化遺産登録を契機とした地域価値の向上に関する調査報告書と題してまとめてあるのがヒットします。こちらを読むと、受け入れ側のオーバーキャパについて触れられていますが、もう一つ屋久島や白川郷などの環境破壊についても触れられています。

日本一のトビシマカンゾウの群生地 大野亀

訪れる観光客が増えれば、一定数マナーの悪いお客様も来客することは否めません。わかりやすい事例で言うと、日本一のトビシマカンゾウの群生地である大野亀。5月〜6月ぐらいにかけてトビシマカンゾウの大群生を一目見ようと、観光バスも複数台、レンタカーや自家用車が通常用意してある駐車場に収まらず、臨時駐車場を草刈りをして整備し、交通誘導しないと来客に対応出来ない程です。

そして、コロナ禍だからなのか、昨年などはマスクの落とし物がいたるところに散見しました。ごみ問題もさることながら、良い構図で写真を撮りたいがため、花を踏み荒らしてトビシマカンゾウの群生の中に入って撮ろうとするカメラマンがいることです。これは直接的な環境破壊と言えます。これらは目に見える弊害ですが、実は目に見えない弊害もあります。

高層湿原性浮島

こちらは大佐渡スカイラインからほど近い、乙和池という天然の池です。高層湿原性浮島があり、その大きさに至っては日本一と言われる県指定の天然記念物の場所。静寂な新緑が鏡のようになった池の水面に映り込み、絶景スポットとして人気です。こちらは観光バスが立ち寄ることが難しい、乗用車がすれ違うのがやっとな細い道の奥にあり、駐車場も乗用車が7〜8台ほど停まればいっぱいになる場所です。

光るキノコ 月夜茸

9月頃にはこの池に生えるツキヨタケというキノコが見れます。このキノコは枯れたブナやミズナラに寄生するのですが、完全に朽ちてしまうと発生しません。近年このキノコの数が増えたのは、ブナやミズナラが枯れたということであり、その枯れた原因のひとつがこの池に訪れる人が増えたことに起因するのではないかと、地元の樹木医の方からお話を聞きました。

樹木医の方いわく、乙和池の周りの遊歩道になっているところに、むき出しになった木の根っこがいたるところにあり、それを人が踏み傷つけることで、悪い菌が入り込み樹木が弱っていき、やがて倒木するほど枯れてしまうこともあるのだとか。(他にも様々な要因がある)

乙和池の倒木

こうしたオーバーユースの対策として、ウッドチップを遊歩道に敷いて、樹木の根のダメージを軽減するという取り組みをしました。これも非常に難しく、ウッドチップを厚くしすぎると、そこに悪い菌が繁殖し樹木や周辺の環境に悪影響を与えることもあるそうで、経過観察しながら慎重に環境を見守らなければならないそうです。

こうしたオーバーツーリズムの目に見えない環境負荷は、ダメージが目に見える段階になると取り返しがつきません。だから閉鎖する、やめるなど閉ざしてしまうのではなく、共存していく道をどうやったら構築出来るかを考えねばなりません。例えば、乙和池の自然を守るために神社にお賽銭兼募金箱のような感じで設置して、訪れた方に寄付を募り、その集まった金額で集落の方の整備資金、樹木医の方への謝礼金などに当てるなどやり方はあるはずです。

乙和池神社

こうした自然の絶景スポットは訪れる人が増えても、地元にお金が落ちる仕組みに繋げるのは難しく、大野亀に関しては大野亀ロッジにその時期になるとお客様が殺到し、そこにお金が落ちるぐらいで、駐車場整備をしたり、トビシマカンゾウ以外のススキや蔓性植物などの草刈り駆除など掛かる費用に対して直接的な売上に直結する仕組みはありません。もちろん、訪問の需要があれば交通機関、宿泊施設、飲食や土産屋なども間接的な売上に繋がるのだとは思います。

佐渡島も含め自然景観をウリにしているところは、きっと同じ悩みを抱えていると思います。
何か良い解決策はないか、いつも考えてはいるのですが、答えは見つからず。
今後も私に出来うることをこの発信ということを含め、していきたいと思います。

最後にこのブログを最後までご覧になった方へお願いを一つ。
樹の周辺を歩く際には、なるべく木の根っこを踏まないように気をつけて歩きましょう。でも決して怪我はしないように。

佐渡金山の新コース無名異坑(山師ツアー)

佐渡金山無名異坑

2018年4月からオープンした無名異坑コースに行ってきました。ここは上級者向け(マニアックでモノ好きな人向けw)の山師コースという、予約しないと入れないガイド付きのコースです。
通常は「宗太夫坑」コースで、こちらは江戸時代の坑道を掘っている様子を再現した人形がいるコース。地元の方は遠足などで行ったという方も多いですし、新潟県内の方なら小学校のときに修学旅行で訪れたという方も多いです。「道遊坑」コースは佐渡島内の方でも行ったことがないという人の方が多い、明治~昭和にかけての坑道の様子を公開したところ。

あとはガイド付きの予約しないと行けない2つのコースがあり、「ガイド付き世界遺産ツアー」と「ガイド付き山師ツアー」です。
世界遺産ツアーは既に行ったことがあったので、このガイド付き山師ツアーを申し込みました。

無名異坑
無名異坑

こちらは事前に予約が必要で、4月~11月まで入れます。一組2~10名までの制限があります。
坑道内は水たまりもあり、長靴が無いと歩けないのですが、長靴、ヘルメット、軍手、ライト、服が汚れないように雨合羽を佐渡金山の方が用意してくれます。この日は私達だけで貸し切りツアーでした。
料金は大人2400円、中学生1200円で、所要時間は100分程度だそうですが、私達は大切山の坑道は既に入ったことがあるので、大切山はパス。
佐渡金山の山師探検ツアーで大切山抗の坑道内へ探検!(佐渡世界遺産になる前に急げ!)

無名異
無名異

入り口から入ると、早速鉄分を含んだ赤い岩や土が見えてきました。
無名異焼は金鉱石を溶かすため、炭に空気を送る羽口と呼ばれるパイプの部分に使われました。人間国宝の伊藤赤水さんは元々は羽口屋さんだったそうです。

坑道
白カビ
白カビきらきら

坑道に入るとところどころが、白くキラキラしているものが見えるのですが、これは白カビだそうで、その白カビに坑道内の湿気が水滴となって付いて、ライトの明かりでキラキラ光って見えるようです。このキラキラしているのが、本当に綺麗なのですが、まぁカビです。

線路
トロッコ用線路

坑道内はトロッコの線路があり、鉱石を運んでいた当時を彷彿とさせます。前日雨だったせいか、ぬかるんだ感じになっており、長靴が無かったらきっと泥だらけでしょうね。また、壁もしっとりと濡れている感じですので、迂闊に触ると泥が付きます。カバンなどが付かないように気をつけましょう。

坑道内ランプ

ここで、当時のランプの明かりがどれぐらいだったのかというのを、体験します。燈明皿も無名異焼で作られています。この燈明は流石にろうそく並の明るさですから、これだけで坑道内を歩くのは非常に困難。時代とともに、灯りも進化してより明るく、遠くまで明かりが届くようになっていきます。

キクガシラコウモリ

坑道内にはコウモリがいるとのことでしたが、このコースは遭遇率は高そうです。ちなみに、キクガシラコウモリに出会えました。

無名異焼

坑道の中程に差し掛かると、無名異焼の作品が並べられ、無名異の土のサンプルも置いてありました。この土は門外不出で佐渡島外へ持ち出しが禁止されております。焼き上がった無名異焼の作品はお買い上げいただき持ち帰りが出来ます。無名異の土は昔は薬としても用いられ、血止め、胃腸薬などで使われたそうです。

坑道出口

この中程のところでは、「ほ~らいら、ほ~らいら♪」とやわらぎという歌が聞こえてきます。どうやら、宗太夫坑の出口付近が直下らしく、下から歌が聞こえてきます。ぐねぐねと入り組んでいるので、方向感覚がわからないのですが、無名異坑の入り口からググっと左側にある宗太夫坑の出口へと歩いていったのですね。

ダンジョン
ダンジョン

坑道はまだまだ続き、ガイドさんの説明を聞きながら進みます。途中ヘルメットを何度かぶつけてしまいましたが、身長が高い人は気をつけてください。勢いよくぶつかれば首やられますので・・・。

トロッコ
トロッコ

線路に頓挫しているトロッコ。明治時代のものと思われますが、朽ちた感じが時代を感じさせます。ここに鉱石を山盛りに積んで鉱夫たちが手押しで運んだのでしょうね。

鉱石
坑道入口

このトロッコが置いてあるところらへんが、一番奥らへんでして、そこから元の道を引き返していきます。滅多に来れない(二回来ようという人は中々いないと思われますが)ので、もう一度よ~く目に焼き付けつつ撮影しながら引き返します。

金鉱石

最後記念にということで、金鉱石をいただきました。
数に限りがあるかも知れませんので、欲しい!という方はぜひこの山師コースをご予約ください。もしくは売店に販売している金鉱石をお買い求めください。

佐渡金山公式HP
http://www.sado-kinzan.com/
〒952-1501 新潟県佐渡市下相川1305番地
電話:0259-74-2389 Fax:0259-74-3235
営業時間 4月~10月 / 8:00~17:30 11月~3月 / 8:30~17:00

当館から佐渡金山の無名異坑コースへの地図

佐渡金山の山師探検ツアーで南沢疎水抗へ潜入(世界遺産になる前に急げ!)

南沢疎水抗

引き続きの記事になります。
佐渡金山の山師探検ツアーで大切山抗の坑道内へ探検!(佐渡世界遺産になる前に急げ!)

今回は南沢疎水抗へと佐渡金山の車で移動。金山より少し下ったところにある普段は立入禁止の区域。おそらく佐渡の人もここの存在を知っている人は半分以下でしょう。それぐらいマニアックなところなのです。南沢疎水抗は佐渡金山の鉱山内に溜まった水を排水するためのもので、元禄4年(1691年)に掘り始め、6年後に完成した排水坑です。
長さ922mとありますが、未調査部分を含めるともう少し長いとか。未だに先進的な大学研究所による調査ロボットで、坑内を調査中というまだまだ謎の多い坑道なのです。
南沢疎水抗入り口

ここの脇にあるこの建物。実はこの建物は佐渡の環境を守る重要な施設なのです。
佐渡金山の鉱山内に溜まった水は酸性で、そのまま海に流してしまうと環境破壊に繋がってしまうということで、この施設でph調整してから排出しているのだそうです。皆さん、この事実はご存知でしたでしょうか?
PH中和施設

さて、鉄格子を開けて坑道内へと入っていきます。
南沢疎水抗 鉄格子

安全のために単管を組んでありますが、突起物があったり、足元は滑りそうなところもあり、油断するとキケンな場所です。疎水抗には手すりなどは付いていませんし、落ちてしまうと大変です。携帯やカメラなども落とさないように気をつけましょう。
南沢疎水抗入り口

この南沢疎水抗
の特徴はその掘り方にあります。将棋の駒のような五角形をした形になっているのです。何故急いで掘らせたにも関わらず、このような凝った形状で掘り進めたのかも謎のままなのです。また佐渡金山の資料館にもありますが、6箇所から同時に掘り進めるわけですが、当時機械などあるわけもなくノミのみで掘り進めます。岩盤が硬く1ヶ月に約16mしか進みません。中には五角形の形が歪なところもあり、技術の差で綺麗な五角形のところとそうでないところがあります。
南沢疎水抗

6箇所から掘り進めた南沢疎水抗の貫通点の誤差はわずか50~60cm。江戸時代当時としてはとても測量技術力の高い工事だったと言えます。
蜘蛛の巣間切り

また疎水抗の中にはいくつか妙なノミ跡もあり、これはそのうちのひとつ。
何故か逆卍(ぎゃくまんじ)のノミ跡が残されています。ミステリーな一面も沢山残されている南沢疎水抗。また、天井のノミ跡は「蜘蛛の巣間切り(くものすけんぎり)」とも呼ばれ、水滴が付くとまるで宝石を散りばめたように光って見えます。
逆卍のノミ跡

疎水抗の中にはいくつか落書きも残されており・・・これも謎多き南沢疎水抗のうちのミステリアスな一面といえるでしょう。
南沢疎水抗の落書き
南沢疎水抗の落書き
南沢疎水抗の落書き

私が見ていて神秘的だなぁと感じたのは・・・カビ。
ふわふわの真っ白なカビがびっしりと壁についていたり、ぶら下がっていたり。こんなところに住み着いているカビも、神秘的でミステリアス。
白かび
白カビ
白かび
白カビ

帰りは元来た道を帰ります。
922mの全長すべてを歩くのではなく、そのうちの約200mぐらいを往復した感じでした。

ガイドさんもおっしゃっていましたが、ここの南沢疎水抗の坑道内は世界遺産に登録されたら、おそらく入れなくなるだろうと。
安全のための柵をつけたら、史跡としての価値が下がってしまうし、とはいえ安全確保が出来るようなものでもない。なので、未だ見ていない方はぜひ今のうちに探検してもらいたい。
こういうマニアックな坑道ツアーは、全国でもそんなに無いはずです。

佐渡金山公式HP
http://www.sado-kinzan.com/
〒952-1501 新潟県佐渡市下相川1305番地
電話:0259-74-2389Fax:0259-74-3235
営業時間 4月~10月 / 8:00~17:30 11月~3月 / 8:30~17:00

※既にこのコースは一般の方は入れなくなりました。残念。

当館から佐渡金山までの地図