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漁師秘蔵の熟成吊るし鰤の秘密

吊るし鰤

「漁師秘蔵の熟成吊るし鰤」というのがあるらしい・・・と以前噂で聞いた事があり、なんでも寒ブリの採れる時期に漁師さんは美味しい脂のノッた美味しいそうな鰤を自分用に取っておくそうで、その鰤は血抜きをして吊るしておき、吊るすことで脂が上手く回り熟成されてより美味しくなるのだとか。そしていい感じに熟成された吊るし鰤を身内で美味しくいただくのだそうです。
なんというけしからんうらやましいことでしょうか。これはぜひとも確かめねばなるまい。

「吊るし鰤」と検索しても手がかりはなく、漁師さんの知り合いのいる友人数名に噂を聞いてみたところ、今でもやっている人がいるらしいという情報を聞きつけたのが鷲崎にある「内海府漁業生産組合」。寒ブリ大漁まつりの会場になる場所でもあります。

現地に到着し、早速漁師さんにご挨拶。多田好正さんがその吊るし鰤を今でもやっている方だそうで、お話を聞くことに。
本当に美味しい寒ブリは締め方に秘密があるようで、寒ブリが揚がったらその中でも厳選したブリの脳天から鋭利なものを刺して頭蓋骨を壊し、脳を破壊して動きを止めます。その後エラの一ヶ所を切り血抜き作業をして、脳天から脊髄へワイヤーを通し、神経を破壊してから徐々に体温を下げて、エラと内臓を取り出して吊るし鰤になるのだとか。

氷締め用の氷

ちなみにその他の鰤は氷締めするのですが、内海府漁業生産組合では海水を凍らせてかき氷のようにきめ細かく砕き、採れた寒ブリをその中に入れて氷締めにするそうです。こうすることにより、細かな氷がブリの体表にまとわりつき、瞬時に氷締め(即死)させる効果があるのと同時に傷をつけないのだそうです。よく使われる大きなカチ割り氷だと、ブリが暴れた際に体表に傷が付くのだそうです。

氷締め

吊るし鰤は一本ずつ処理を行うので手間がかかりますが、身の変色がなく引き締まった美味しい寒ブリになるそうです。

しかし、多田さんの行う吊るし鰤はさらにここから熟成という過程を経るわけですが、吊るすことにより旨味のある脂を全体へとまわす効果もあり、吊るし方は頭を上にしたり、尻尾を上にしたりもするのだとか。そして4〜5日程吊るしておくと、魚の中のタンパク質が酵素や微生物の作用により分解され、アミノ酸やイノシン酸、グルタミン酸などの旨味成分になり、身も柔らかくなり旨味ものるのだそうです。

神経締めしているからこそ、身の変色もなく臭みも出ない状態で熟成がかけられる吊るし鰤に出来るそうです。

吊るしブリ

今回は熟成中だということで、試食までは出来なかったものの、またいつかタイミングバッチリの状態の寒ブリを食べに行きたいと思います。

羨ましく思ったのが、この内海府漁業生産組合の近くにある内海府小学校・中学校の給食では、たまに寒ブリのお刺身が出るのだとか。小さな学校だからこそ出来る素晴らしい食育の取り組みですよね。

また新たなプロジェクトとして、この近くで農業をしている無農薬の安心安全な野菜を作っている本間太郎さんと共同で、鰤の内蔵やアラなどを発酵して堆肥として大根を育てている畑に使用し、ぶり大根用の大根として出荷するのだとか。もう取り組みが素敵すぎて早く食べたいです。

寒ブリ

さて、散々美味しそうな漁師秘蔵の熟成吊るし鰤について調べたわけですが、じゃぁどこで買えるんだ?というご質問があるだろうと思い、多田さんに聞いてみたところ携帯番号を・・・というなんともデンジャラスなご提案をしていただいたので、やんわりと却下し、ならばということで内海府漁業生産組合へと問い合わせてください。
お電話する際には「鷲崎の多田さんの吊るし鰤が欲しいのだけど、取り次いでもらえるか?」とお話するとスムースかもしれません。

ただし、秘蔵である故に、寒ブリが揚がったらという条件と、熟成が終わるまで待つということ、お値段はそれだけの手間暇かかるので、もちろん覚悟の上でご注文くださいね。12月〜2月ぐらいが寒ブリの揚がる時期ですから、注文のタイミング的に「今」なんじゃないかと。

■内海府漁業生産組合
TEL:0259-27-5802(両津夷)
TEL:0259-26-2218(鷲崎漁場)

当館から鷲崎漁港までの地図